朝、顔を洗おうとして腰を曲げた瞬間。
床のものを取ろうとした時。
椅子から立ち上がろうとした時。
あるいは、何でもない動作の途中で突然、
「あっ」
と腰に強い痛みが走る。
そのまま身体を伸ばせなくなったり、
一歩踏み出すことさえ怖くなったりする。
寝返りもつらい。
起き上がれない。
立ち上がる時に腰が抜けそうになる。
「このまま動けなくなるんじゃないか」
「何か壊れたんじゃないか」
初めて強い腰痛を経験した方ほど、
そんな不安を感じることもあると思います。
いわゆる「ギックリ腰」は、
ひとつの決まった病名というより、
突然、腰に強い痛みが出て動くことが難しくなった状態
を指して使われることの多い言葉です。
だから、同じように見えるギックリ腰でも、
身体の中で起きていることは一人ひとり違います。
筋肉や関節、椎間板などの組織の問題。
それまでの身体の使い方。
仕事や運動による疲労の蓄積。
睡眠や生活のリズム。
日常の姿勢や運動不足。
冷え。
過去の怪我など。
多くの場合、様々な要素が複合的に絡みあっています。
そして、痛みに対して身体が強く緊張し、
動きを止めようとしていることもあります。
ギックリ腰様の症状で来院された患者様に話を聞くと、
「本当に突然だった」
と言っていた方でも、
そういえば、
数日前から腰が重かった。
少し曲げにくかった。
何となく疲れが抜けなかった。
という前触れがあったケースも珍しくありません。
私はギックリ腰を、
その瞬間だけに起きた問題として見るのではなく、そこまで身体に何が積み重なっていたのか
という視点でも見ています。
発症したばかりの時期は、
身体が強く緊張し、少しの動きでも痛みが大きく出ることがあります。
発症直後から数日ほどは、
痛みや動きにくさが大きく変化することがあります。
この時に、
無理に伸ばす。
強く揉む。
痛い方向へ動かす。
「動かさなければ」と頑張る。
そうした刺激が、かえって身体の緊張と痛みを強めることもあります。
では、全く動かなければいいのか。
というと、そういうわけではありません。
無理なく動ける範囲で動いていくことも、時には必要です。
例えば、比較的楽な姿勢を探しながら、
寝返りや立ち上がりなど、できる動作を痛みの許す範囲で丁寧にゆっくり少しずつ行います。
私自身、過去に急性の腰痛を何度も経験してきましたし、
長年、整体師として強い腰痛の方の身体にも触れてきました。
その経験から感じるのは、
発症直後ほど「何とかして治そう」とするより、まず今、身体がどこまで動けるのかを、落ち着いて丁寧に確認することが大切だということです。
一方で、強い腰痛の中には、
整体よりも医療機関での確認を優先した方がよい場合があります。
脚に強い麻痺やしびれがある。
排尿排便の明らかな異常。
発熱を伴っている。
激しい転倒や事故後の痛み。
こうした場合は、まず医療機関への相談をおすすめします。
私が身体を見る時には、
どの姿勢なら比較的楽なのか。
寝返りはできるのか。
どう起き上がると痛みが少ないのか。
立ち上がる時、どこで身体が止まるのか。
仰向けで脚を動かした時、どこに緊張が出るのか。
そうした身体の反応を一つずつ確認します。
そして、
痛みのない範囲で身体に触れ、
呼吸や緊張の変化を見ながら、
その時の身体に無理のない範囲で整えていきます。
身体の変化は、その場ですぐに感じられることもあれば、
時間の経過とともに少しずつ現れてくることもあります。
発症直後は身体が刺激に敏感になっていることもあり、
わずかな刺激でも一時的に痛みを強く感じることもあります。
だから私は、
「一回で何とかする」ことよりも、その身体が今どの段階にいるのかを見誤らないこと。
そして、それを患者様と共有すること。
を大切にしています。
そしてもう一つ。
ギックリ腰になると、
「腰が悪い」
と思ってしまいがちです。
しかし、症状が腰に現れたとしても、腰だけしか見なければ、他の大切なことを見落としてしまうこともあります。
それはギックリ腰の原因に深く関わるものかもしれません。
股関節。
膝。
足首。
重心。
上半身の緊張。
身体の協調性。
呼吸。
姿勢。
癖。
身体全体を観察してみると、
腰がその人の動きの中で、最も負担を引き受けていたように感じることがあります。
もちろん、
「すべてのギックリ腰はこうだ」
という話ではありません。
これは私自身の腰痛経験と、
長年、人の身体を見てきた中で持っている一つの見方です。
一方で、
「どう動けばいいのか分からない」
「起き上がるのが怖い」
「この痛みとどう付き合えばいいのか分からない」
そんな時には、
今、自分の身体が何を嫌がり、
どの動きなら受け入れられるのかを一緒に確認していくこともできます。
ギックリ腰になると、
身体に突然裏切られたように感じることがあります。
でも私には
身体が突然壊れたというより、
それまで我慢していた身体が、とうとう強くブレーキをかけたように見える
ことがあります。
だからこそ、
ただ痛みを消すことだけで終わらせず、
「なぜ、このタイミングで身体が止まったのだろう」
と身体を振り返ってみる。
ギックリ腰をきっかけに身体を振り返ってみると、見えてくるものは意外なほどたくさんあります。
その背景を知ることは、これからの身体の使い方やセルフケアを考える手がかりにもなります。
ギックリ腰を、自分の身体を知るきっかけにする。
そんな見方もあるのだということを、
このページを通して知ってもらえたらと思います。
ご縁を感じたら、ぜひ照整体院にご相談ください。
照整体院がどんな考え方で身体を見ているのかについては、
のページでも詳しく紹介しています。